読書メモ:確率思考の戦略論-USJでも実証された数学マーケティングの力-
2019/11/28
プレファレンス
- プレファレンス=消費者のブランドに対する相対的な好意度。ブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つで決まる。
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消費者はエポークトセットを持っていて、購入時のブランド選択はその中らランダムに行われる。その中の割合はプレファレンスによって決まる。(エポークトセット=10面サイコロ。面の個数がプレファレンスによって決まる)
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戦略、すなわち経営資源の配分先は①プレファレンス(好意度)②認知③配荷の3つに集約される。伸び代があるのはプレファレンスのみ。戦略の究極的焦点は消費者プレファレンスを高めること。
- プレファレンスをあげることで成長させるのは「ブランドの質的成長」。認知と配荷をあげることで成長させるのは「ブランドの量的成長」。
認知
- 「{ブランド名}を知ってますか?」に対するYesはAided
Awareness(エイディッド・アウェアネス)。認知の最大面積を測定するのに適しているが、「知っている気がする」の人も含まれる。需要予測には重要。均一性に優れるので、比較やベンチマークにしやすい。「知っている気がする」回答も全てに含まれるので大きな問題ではない。「〇〇と聞いて思い浮かぶブランドは何ですか?」で出てくる場合はUnaided Awareness(アンエイデッド・アウェアネス)。エポークトセットへの入り方がわかるので、マーケターが重視する指標。真っ先に名前が上がることを「第一ブランド想起率」と言い、第一、第二はエポークトセットとの相関が高い。
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圧倒的No1ブランドでない限り、認知の面積や質のどこかに伸び代はある。が、費用に対する認知率伸長の効果は逓減していく。(今の認知率が高いほどそれ以上あげるのにコストがかかる)
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事例:USJのハリーポッター成功のために必要な認知率は90%。純広告では75%が限界。残りを埋めるために、メディアからのUSJへの関心の低さを改善するため『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』の本を書いた。結果、ビジネス書ベストセラーになり、メディアの注目を集め、計測上の認知率100%。
配荷
- 配荷率:市場にいる何%の消費者が、その商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるか。商品の場合、置かれている店舗。
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事例:コカコーラは自社の業務をブランディングと原液の販売に集中。現地での生産と販売を募るフランチャイズ方式。これにより、消費者に近いところで生産可能、新鮮な商品を届けることができ、流通システム構築に必要な経営資源を他社に依存。これで配荷率を拡大した。
- 配荷は質=内容を改善することでも1配荷あたりの売り上げを伸ばせる。
プレファレンス
- プレファレンスは自社が選ばれる確率。消費者のプレファレンスは負の二項分布の式で計算できる。その中に M と K が登場する。・M
は選ばれる確率そのもの。自社ブランド全ての消費者が選択した述べ回数を消費者の頭数で割ったもの(=1消費者あたりのブランド選択回数)。コントロール可能。・K
は購入確率の分布の形。ガンマ分布。山の形。消費者のプレファレンスによって結果的に決まるので直接コントロールできない。
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戦略の本質:市場全体の中で自社ブランドへの一人当たり投票数をどう増やすか。プレファレンスを伸ばすには二つの選択肢。数を増やす水平、量を増やす垂直。水平の方が成功する場合が多い。既存ユーザを掘るより周りを耕す方がマーケットが大きい場合が多いから。
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消費者を区切ったマーケティングはMを増やすためで狭めるためではない。自社ブランドの市場全体に置けるプレファレンスを拡大するのが目的。ターゲティングはその一つの手段。
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事例:USJ。映画だけのテーマパークからエンターテイメントを集めたセレクトショップ。集客力があるならアニメ・漫画・ゲームでも取り入れる。既存の「映画好きなファン」は、映画のテーマパークだから来ているのではなく、好きなコンテンツがあるから来ている。だから路線変更してもプレファレンスに影響はなかった。
戦略
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売上の基本的要素7つ。コントロール可能の有無と主要因で考える。(P77表)(1)認知率(2)配荷率(3)過去購入率(4)エポークトセットに入る率(5)年間購入率(6)年間購入回数(7)平均購入金額
プレファレンスの構成要素
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ブランドエクイティー。最重要要素。競合との相対で決まる。購買意思決定を左右する軸は何か。競合を含めたポジショニングを知るところから始める。・経年での比較をするために調査方法や表現は変えない。実測値と消費者のプレファレンスの相関関係を分析し、Mを増やすためのエクイティーを理解する。・強固に所有しているエクイティーは奪いにくい。ブランド・エクイティーは財産。
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2番手以下が挑む時は差別化。差別化もターゲティングと同じく市場全体から自社へのMを増やすためのものという目的意識が必要。狭めるためにやっているわけではない。
消費者視点
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事例:洗剤の製品パフォーマンスは重回帰分析によって「汚れを落とす力」「香り」「すすぎのし易さ」の重要度だった。当時、4.1kgの粉末洗剤が主流の中、花王が1.5kgの「アタック」をだし、洗浄力と軽くて持ちやすいという点でNo1ブランドになった。店頭から家で使い終わるまでの消費者の行動を考えていた。
消費者データ
- 未来に対する質問の絶対値は怪しいが相対順位は比較的正しい。バイアスが全ての選択肢に等しくかかるから。
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回答者は質問者を悦ばせようとするから「Aを聞いたことがありますか?」よりも「Aを聞いたことがありますか?それともありませんか?」の方が現実に近い結果になる。
- 世帯パネルデータで「1個あたりの平均購入単価」「1回あたりの平均購入個数」の2つの値は正しい。
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「群衆の知恵」目の前の牛の体重を当てる、ガラスの入れ物に詰まったキャンディーの数を予測する、ということを多数の人にしてもらって、その平均値を出すと実際の値とほぼ同じになる。
組織
- 部署間に役割の違いはあっても上下・優劣の違いはないことを徹底させる。・人に使ってもらえるということは自分の能力を発揮するのに素晴らしいこと。
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