たった3つのメロディーで76曲 - サガフロ2の音楽と濱渦正志という作曲家

2013/06/09


1999年4月1日、Saga(サガ)シリーズの最新作『サガフロンティア2』が発売された。

サガシリーズとはスクウェアのRPGでファイナルファンタジーシリーズに続くビッグタイトル。自由度が高く歯ごたえのあるRPGとして今も多くのファンがいる。 それまで、サガシリーズの音楽といえば伊藤賢治氏(以下イトケン)だった。今や「パズドラの音楽を担当した人」というほうが伝わるイトケンだが、ゲームファンにとってはサガのイトケンだった。特に戦闘曲に定評があり、ゲーム戦闘曲の話になれば必ず複数の曲名があがる。

そんな、偉大な先人のいる歴史あるシリーズの最新作『サガフロンティア2』の作曲を担当したのは、『チョコボの不思議なダンジョン(PS)』などの音楽を担当していた、当時まだ若手の濱渦正志氏(以下濱渦氏)だった。

通常、ゲームの曲は場面によってメロディーが異なる。街とフィールドと戦闘はどれも違う。街は活気があふれ、フィールドは壮大で、戦闘は激しい。 しかし、濱渦はゲーム内76全ての曲を3つのメロディーで構成した。街も戦闘もイベントも同じメロディーが使われている。

例えば、病気の母と会うような悲しいイベントで使われる『Variation』(出だし)と、ボス戦の曲の『Besessnheit』(1:34〜)は同じメロディー。同じメロディーを使って異なる雰囲気の曲をつくり、正反対の場面を成立させている。

演出面でも面白いのは、3つのメロディー全てが使われている(1)『Feldschlacht I』という通常戦闘用の曲。セーブデータが無い状態でサガフロンティア2を始めると、タイトル画面を飛ばしてオープニングの戦闘イベントが始まり、そこで流れるのが『Feldschlacht I』。 つまり、ゲームのタイトル画面の曲よりも先に、全てのプレイヤーがサガフロ2の曲として最初に耳にするのがこの曲であり、そこには全てのメロディーが使われている。全てのプレイヤーはゲーム開始直後にサガフロ2の曲の全てを知ることになる。

クラシック風の音楽はサガフロ2の水彩画のようなグラフィックにも見事に合い、シリーズのファンにも認められた。 浜渦氏はその後、次のサガシリーズであるアンリミテッドサガの作曲も担当し、こちらも名曲揃い。さらに、植松信夫氏と共にFFⅩの音楽も担当。植松氏が去った後のFFシリーズも担当し、スクウェアを代表する作曲家になり、2013年現在はフリーランスで活躍している。


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